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スタッカークレーンが物流の自動化で果たす役割と減速機の重要性

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目次

倉庫の自動化で近年注目を集めるスタッカークレーンは、垂直・水平に可動し、荷物の高所格納や迅速搬送を実現します。しかし、スタッカークレーンの高所格納・迅速搬送を実現するには、駆動軸に搭載される減速機(ギヤヘッド)の選定が極めて重要です。
速度制御・位置決め・トルク伝達・耐久性などの要求をクリアできなければ、装置全体の性能低下や故障リスクが高まるためです。

こうした課題に対応するためには、スタッカークレーンの構造や動作原理、そして減速機の役割を正しく理解することが不可欠です。  

そこで本稿では、スタッカークレーンの概要や可動軸の仕組み、減速機との関係性、さらに選定時に求められる要件について詳しく見ていきます。

スタッカークレーンの基本機能と役割

スタッカークレーンとは、自動倉庫システム(AS/RS)において荷物の格納や取り出しを担う中枢的な装置です。近年では物流現場の自動化・省人化の進展により、高所収納や迅速な搬送が求められ、無人で稼働するスタッカークレーンの導入が進んでいます。

本体は垂直・水平の二方向に可動し、ラック間の搬送や高所への格納作業を行います。多様な設置形態や、ピッキング・在庫管理との連携により、倉庫の空間効率と作業効率の向上に寄与しています。

スタッカークレーンの構造と各ユニットの役割

スタッカークレーンが倉庫の自動化にどのように貢献しているかを理解するためには、その基本構造と動作原理を知っておくことが重要です。

まず、水平走行ユニットはレール上を走行し、倉庫内の目的位置まで本体を移動させる役割を担います。このユニットの駆動にはエネルギー効率の高いモータと高性能な減速機が用いられており、正確な位置決めとスムーズな動作を実現しています。次に、垂直昇降ユニットは荷役装置を目的の高さまで昇降させる機構であり、ラック&ピニオン方式やワイヤロープ方式などが一般的に採用されています。この昇降機構には、精密な速度制御と高い耐久性を備えた駆動装置が必要とされます。最後に、荷役装置は実際に荷物を掴み、保持し、場合によっては旋回させる部分で、パレット用のフォークやバケットなど、荷物の形状や種類に応じて最適なタイプが選択されます。これら三つの主要な構成要素が連携することで、スタッカークレーンは効率的かつ正確に倉庫内での荷物の取り扱いを行うことが可能となっています。

それぞれの役割をもう少し丁寧に見ていきましょう。

水平走行ユニット

水平走行ユニットは、スタッカークレーンの荷役装置が、目的の格納場所の水平位置まで移動するために必要な機構です。その移動はレール上の駆動車輪・従動車輪・案内ローラーにより支持・誘導され、モータと減速機を組み合わせた駆動により、自動化された精密な走行が可能です。そのため、高効率で高剛性、かつ低バックラッシュの減速機が求められます。

垂直昇降ユニット

垂直昇降ユニットは、荷役装置を目的の高さまで移動させるための昇降装置です。昇降装置のレール上部にはプーリーやシーブが設置されており、チェーンやワイヤロープによって荷役装置がつり下げられています。

昇降装置は、このチェーンやワイヤロープを巻き上げたり巻き下げたりすることで、荷役装置を昇降させます。巻き上げや巻き下げの動作は、モータの回転を減速機によって減速し、その駆動力でスプロケット(歯車の一種。動力を伝達するために、他の歯車やチェーンと組み合わせて使用されます。)やワイヤドラム(ケーブルやワイヤを巻き取るための装置)を回転させることによって実現されています。

近年ではラック&ピニオン方式が主流であるケースも多いです。ラック&ピニオン方式は、垂直マストに取り付けられたラック(歯付きレール)とピニオン(小歯車)を噛み合わせて昇降を行うため、高い位置決め精度と安定した昇降動作が可能です。この方式は特に自動倉庫用のスタッカークレーンで採用されることが多く、ワイヤロープ方式に比べてメンテナンス性や安全性の面でメリットがあります。

荷役装置

荷役装置には、実際に荷物を掴む機能を持つ部分があり、これは人の手に相当します。  

例えば、パレットを扱う倉庫ではフォークが用いられ、バケットを扱う場合にはバケット搬送装置が使用されます。これらの荷役装置は、倉庫の構造やラック、荷物の形状に応じて異なります。  

特にスタッカークレーンのフォークは、荷物を異なる方向に格納する必要がある場合に旋回機能を持つことがあり、これによりラック配置やスペースの効率化に柔軟に対応できます。

スタッカークレーンでは、フォークやシャトルなどの荷役装置を用いる方式がよく採用されます。  


各方式の詳細な特徴や用途例・ポイントを見る
方式名特徴用途例・ポイント
フォーク型フォークリフトのように左右2本の爪(フォーク)を棚内のパレット穴(デッキ)や荷姿に差し込み, 掴み出し/格納を行う方式。構造がシンプルで信頼性が高く、産業用パレット搬送の自動倉庫(重荷重AS/RS)で最も多く採用。
伸縮式フォークフォーク先端に伸縮機構(2段式や3段式)を持ち, 手前の位置から奥行き2段階以上(ダブルデッキ棚や3段深度棚)へも対応できる方式。棚ピッチに応じて伸長量を制御するので, 棚深度を多段階化して収納密度を高められる。
シャトル式クレーン本体(マスト・昇降機構)は上下および通路移動のみ行い, 水平方向(奥行き)への荷物搬送は棚内に配置した小型シャトル台車(電動キャリッジ)が担う分業方式。クレーンとシャトルを組み合わせることで並列処理が可能になり, 高頻度搬送+高密度保管を実現。ミニロード荷重品(ケースやトレイ)を対象とすることが多い。
バケット型バケット(ひしゃく)やトレイ単位で荷物をすくい取る、 またはホッパー形式でケース品・不定形部品・ばら物を扱う方式。ケース品・部品箱・ばら物に適し, パレット保管に比べ収納密度を高められる。


これらの装置は、案内用のレールに沿ってパレットやバケットを棚に引き込んだり、棚から取り出して運搬したりします。  

また、昇降や走行の動力伝達方式としては、ラック&ピニオン方式、ベルト駆動方式、チェーン駆動方式などがあり、荷物の種類や重量、出し入れの速度、必要な位置決め精度に応じて最適な方式が選択されます。

安全で正確な位置制御に用いられる減速機の役割

大規模な物流センターでは自動化が進み、その一環として自動倉庫が活用されています。なかでも、スタッカークレーンを用いた自動倉庫は、荷物の格納や取り出しを自動で行うことで、効率的な管理を実現しています。

スタッカークレーンは、高速で移動する水平走行ユニットと、正確に上下動を行う垂直昇降ユニット、そして荷役装置によって構成されており、これらの駆動には減速機が重要な役割を担っています。

減速機の精度や性能が不十分であれば、水平方向や垂直方向の動作が不安定になり、荷物の落下など安全上の問題が生じる可能性があります。また、必要な駆動力が得られず、スムーズな荷役が行えなくなるケースもあります。スタッカークレーンの安全かつ正確な動作には、信頼性の高い減速機の採用が不可欠です。

実際にスタッカークレーンのどの動きに減速機が関わっており、それがどう性能に影響するのかを見ていきましょう。

速度制御

減速機は、スタッカークレーンの走行や昇降において、モータによる駆動の速度を制御するために使用されます。このとき、適切な減速機を使用することで、スタッカークレーンの移動速度を正確に制御することが可能になります。

速度制御の精度が高ければ高いほど、スタッカークレーンの操作がスムーズになり、結果として貨物の取り扱いが容易になります。

位置決め精度

減速機は、荷物のピッキングや配置の精度を向上させ、正確な位置に荷物を格納することを可能にします。これは在庫管理の正確性を高める重要な要素です。

トルク伝達

減速機は、モータから走行装置や昇降装置の駆動軸にトルクを伝達する役割も果たします。

適切なトルク伝達能力を持つ減速機を使用することで、スタッカークレーンの駆動力が確保されます。これにより、スタッカークレーンは荷物を効率的に運搬することが可能になります。

耐久性

減速機は、スタッカークレーンの長時間運転や重い負荷に耐える必要があります。そういった要求に応えられる信頼性と耐久性を実現するためには、適切な減速機を使用する必要があります。

耐久性のある減速機を使うことにより、メンテナンスの頻度が減り、故障のリスクが低減されるため、生産性の向上にも寄与します。

振動と騒音

減速機の性能は、スタッカークレーンの振動と騒音にも大きな影響を及ぼします。振動は、荷崩れや荷物の破損、さらには装置部品の摩耗につながる可能性があるため、できるだけ抑制することが重要です。また、騒音は周辺環境への配慮や作業環境の改善、作業者の快適性の向上といった観点から、低減させることが望ましいとされています。

適切な減速機を使用することで、振動と騒音を最小限に抑えることが可能となり、これは荷物の保護や部品の長寿命化、労働環境の向上にもつながります。

安全性の向上

スタッカークレーンにおける減速機は、機械の動きを精密に制御し、特に緊急停止が必要な状況でその価値を発揮します。緊急停止時には、高減速比のギヤヘッド単体での減速に加え、非常停止用ブレーキユニット(電磁ブレーキなど)をギヤヘッドに内蔵するか、別置きブレーキを併用します。
この“高減速比ギヤヘッド+ブレーキユニット”の組み合わせにより、瞬時の停止精度を担保し、荷物の落下やラックへの衝突を防止します。これにより、荷物の破損やラックからの落下を防ぎ、作業員の安全にも繋がります。

このように、減速機はスタッカークレーンの性能に不可欠で、速度制御、位置決めの精度、トルク伝達、耐久性、振動と騒音の低減、そして安全性の向上に寄与します。これらの機能は荷物の取り扱いを容易にし、生産性を向上させます。

スタッカークレーンの利点と、それを支える減速機の重要性

スタッカークレーンの利点は多岐にわたります。

  • 自動運転による省力化・省人化により、作業者がつきっきりでなくても荷物の運搬が可能
  • 立体空間の有効活用を可能にし、高い位置の荷役ができるため、倉庫の格納能力を向上
  • 低温や冷凍倉庫、危険物の保管庫などの働きにくい環境でも使用可能であり、作業者の安全性向上
  • スタッカークレーンは指定した位置に確実に移動するため、人為的ミスを防止

このように、現代の物流倉庫では、スタッカークレーンが中心的な役割を担い、高度な自動化を実現しています。

その心臓部とも言える減速機には、以下のような極めて厳しい要求が課されます。

  • 荷物を精密に位置決めするため、高精度な速度制御が必要
  • 重量物を扱う際の大トルクに耐えうる耐荷重性と、予期せぬ状況での迅速な応答性が不可欠
  • スタッカークレーンは長時間稼動するため、減速機の長寿命化は運用コスト削減に直結。さらに、メンテナンスフリーであれば、ストップタイムの短縮にも貢献。

これらの特性を兼ね備えた減速機を選定することで、スタッカークレーンの性能は飛躍的に向上し、安全かつ効率的な倉庫運営が実現可能となります。選択にあたっては、使用環境や荷物の特性を考慮することが重要です。

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