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減速機とは―仕組みと用途、現代産業に欠かせない重要な役割を解説

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現代の多くの産業を支える機器は、位置を決めたり、加工をしたり、ものを移動させたりといった動作を回転で支えているものが多くあります。この回転という動力を上手に使うために不可欠なのが、減速機です。減速機はどういった機器で、どのような仕組みになっているのでしょうか。減速機の特徴と、あらゆる産業に深くかかわっている理由を紹介します。

減速機の原理と仕組み

減速機とは“複数の歯車を用い、回転速度を落としてトルクを上げる機器”です。

モータなど動力源から得た駆動力(回転数)を、歯車などを使って落とすと、減速比に比例したトルクを得ることができます。

例えば、歯が15枚の歯車から30枚の歯車へと駆動力を伝達したとき、回転数は15/30、すなわち1/2となる代わりにトルクは2倍となります。回転数を2としたとき、減速比はそれぞれの歯車の歯数の比をnと置き、1/nと表しますので、この場合の減速比は1/2となります。

最も単純な仕組みの減速機は、上記の例のように歯車を二つ組み合わせたものです。しかし、正確な動きが求められる場面では、さらに多くの歯車を使用し、特殊な機構によって動力の伝達を行う「精密制御用減速機」が使われます。

減速機の種類

減速機は多種多様なモータと組み合わせることで使われます。そのため、減速機自体も多くの用途に対応できるよう、さまざまな種類があります。

一般的な減速機

減速機は、内部にある歯車の組み合わせ方や使っている歯車の種類によって、回転軸の向きや力の伝え方が異なります。

代表的な種類として次のようなものがあります。

  • 同芯軸減速機

同芯軸減速機は、入力軸と出力軸とが同一軸上に配置され、モータの回転軸の延長線上に減速機の軸を配置できる減速機です。

代表的な種類としては、遊星歯車を用いて減速を行う仕組みの遊星歯車減速機があります。遊星歯車を使うことによって入力軸と出力時を同一軸上にできます。また、減速機の外寸を変えずに減速比を変えやすく、歯車の噛み合い数も多いことから負荷に対して強いという特徴もあります。
減速機自体のサイズをコンパクトにでき、さらに入力軸と出力軸が同一軸上に配置されるため、モータと組み合わせた際にも全体としてコンパクトにすることが可能です。

  • 直交軸式減速機

直交軸式減速機は、入力軸と出力軸が同一平面上にない直交の関係となる減速機です。代表的なものとして、ウォーム減速機と傘歯車減速機があります。

ウォーム減速機は、ネジ状の歯車のウォームと斜歯(はすば)歯車のウォームホイールを組み合わせたウォームギヤを用いた減速機です。非常に高い減速比を得られるのが特徴です。
また、ウォームホイール側の出力軸を回転させようとしてもウォームが動かず、入力軸は動きません。この特性から、安全性を高める用途で使うことができます。ただし、ウォームとウォームホイールの間の動力伝達は歯車の滑りによって行われるため熱を発生しやすく、一般的に負荷時間率は低く設定されています。遊星歯車減速機と比べ静音性に優れます。

傘歯車減速機は、ベベルギヤ(傘歯車)やハイポイドギヤ(傘歯車の一種)を使った減速機です。傘歯車を二つ組み合わせることで軸回転を90度変換することができ、入力軸に対し直交した出力軸となります。
ウォーム減速機と比べ熱を持ちにくいため、負荷時間率は高めです。また、傘歯車は歯が堅牢なため大きな負荷にも強いという特徴があります。

  • 平行軸式減速機

スパーギヤ(平歯車)やヘリカルギヤ(はすば歯車)を数段階組み合わせることによって減速を行う減速機です。入力軸と出力軸は平行の位置にあります。
数段階の歯車の組み合わせによって幅広い減速比に設定可能です。スパーギヤは動力伝達効率に優れ、ヘリカルギヤは静音性に優れます。

精密制御用減速機

上記のような一般的な減速機は、重機や農機、産業機器から家電製品まで幅広く使われています。

減速機は歯車で構成されている以上、歯車と歯車の間に隙間を設定して、減速機をスムーズに動かす必要があります。この隙間のことをバックラッシと呼びます。

しかし、サーボモータによって正確な位置決めを繰り返し行う産業用ロボットや工作機械などでは、バックラッシがかぎりなく小さいことが望まれます。こういった用途にはバックラッシを減少させた精密制御用減速機を使用します。精密制御用減速機は、一般的な減速機で使われる歯車の組み合わせを複数用いたり、歯車以外の特殊な構造によって動力を伝達したりすることで、精密な伝達を実現しています。

精密制御用減速機の特殊な機構としては次のようなものがあります。

  • 波動歯車装置と呼ばれる金属の弾性を利用して回転の伝達を行うもの
  • 偏心体によって曲線板を揺り動かし、カムを介して動きを伝達するもの

ナブテスコでは、プラノセントリック方式の減速機構を採用した精密減速機RV™を開発しています。精密減速機RV™についてはこちらで詳しく紹介しておりますのでご覧ください。

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減速機の用途例

減速機はさまざまな場所、さまざまな場面で使われています。その用途例を見てみましょう。

意外と身近にある減速機

減速機は動力から異なる回転数とトルクを得たい場合に使用します。こういった回転数とトルクのトレードオフは、身近な場所でも多く用いられています。

例えば、コーヒー豆を挽いて粉にする電動コーヒーミルは、低速で挽くと豆に熱を与えずうまみと香りを逃さないと言われています。しかし、コーヒー豆は硬いため刃を力強く回さなければなりません。従来は刃を高速回転させることによって豆を粉砕していましたが、低速回転のタイプでは刃をゆっくり回転させながら強い力が必要になります。ここに減速機が使われ、強いトルクを生み出し低速でのミルを実現しています。

このほか、次のような生活のなかで普段使われているものや、社会に必要なものなど、幅広い分野の機器に減速機が組み込まれています。

  • ラジコン、電車模型などの玩具
  • 扇風機、ロボット掃除機などの家電製品
  • ハンドミキサー、フードプロセッサーなどの電動調理器具
  • ジェットコースターやメリーゴーランドなどの遊戯設備
  • MRIや電動車いす、マッサージ機などの医療・介助機器
  • シュレッダーやプリンターなどのOA機器

産業用ロボットには欠かせない減速機

近年開発が活発になり注目されているのがロボティクス分野です。

産業用ロボットはモータを動力として作動するものが多く、1台のロボットには複数の減速機が使われています。

特に精密な動作と位置決めが重要な産業用ロボットには、精密制御用減速機が必要となります。

工作機械の内部で重要な役割を果たしている減速機

工作機械は、さまざまな機器の部品を作るために必要な機械としてマザーマシンとも呼ばれています。

このマザーマシンの内部でも、減速機は重要な役割を果たしています。

マシニングセンタやターニングセンタのようなNC複合工作機械は、コンピュータにより位置制御を行うフライス盤や旋盤が多軸化し複合的な加工を可能にしたものです。近年では、XYZ軸に加え、2軸の傾斜軸も備えた5軸制御によりあらゆる角度から加工を行う工作機械が増えています。

NC複合工作機械のほか、平面研削盤の回転テーブル、レーザ加工機の軸制御など、さまざまな工作機械に精密制御用減速機は欠かすことができません。

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減速機は現代の産業に欠かせない機械要素の一つ

減速機の概要と特徴、使用事例などを紹介しました。

産業用ロボットに使われている印象が強い減速機ですが、それ以外にも多くの機器や装置に組み込まれ、さまざまな部品を作る工作機械にも使用されています。工作機械には高い加工精度が求められており、高精度の加工のための精密制御には、高精度な減速機が不可欠な存在です。

今後も産業用ロボットと工作機械は、さらに進化していくと予想されます。それと同時に、減速機も高精度・高剛性で信頼できるものが求められるようになると考えられます。

ナブテスコ株式会社は、産業用ロボットと工作機械に欠かせない精密制御用減速機で、高い世界シェアと長年の実績を持っています。現代の多くの産業で重要な役割を果たす減速機に興味をお持ちの方は、一度ぜひ当社にご相談ください。

参考: