サーボモータとは―特徴と仕組み、ステッピングモータとの違いを解説
サーボモータは、現代産業のさまざまな分野の機械装置を支えている、と言っても過言ではありません。それほど幅広く使われていますが、機械装置に内蔵されているため、普段あまり目にすることはありません。また、モータとサーボモータは違うものなの?と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、サーボモータとは、普通のモータとどのような違いがあり、どういったことを可能にするのか。サーボモータの特徴や使われている場所の例など、サーボモータについてご紹介します。
サーボモータとモータの違い
モータとは、電気を使ってなんらかの対象を回すものですが、サーボモータにおいては特定のモータ単体を示すものではありません。サーボモータとは、モータの他にサーボアンプなどを組み合わせた、サーボ制御を目的としたモータドライブシステムをいい、高い精度で動作の位置決めができるシステム(サーボ機構)を意味します。
サーボモータの特徴
サーボモータの「サーボ」(servo)は、「サーバント/召し使い」(servant)が語源と言われています。その語源のとおり、指示された動きをサーボ制御によって実行します。たとえば「分速2回転の速さで180度右回転したあと、分速3回転の速さで90度左回転する」といった、指令とおりの位置(回転角度)、指令とおりの速度で動くといった、複雑な動作を可能にする技術です。
そのため、産業用ロボットや精密機械の駆動など、高精度な位置決めを求められる分野で幅広く使われています。
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DCモータとACモータを使ったサーボモータ
サーボモータとモータの違いでもお話ししたとおり、サーボモータとはモータを使用したシステムを指します。そのため、使用されるモータは様々です。
サーボモータで最初に実用化されたのは、直流(Direct Current)電源で動作するDCモータを使用したものでした。
DCモータは小型で低価格、制御も容易という特徴を持っています。しかしながら、構成上発生するメンテナンス問題を抱えていました。DCモータは、コミテータ(整流子)とブラシという回転電気スイッチがついており、コミテータとブラシは接触しながら回転します。ブラシは接触による摩耗をおこし、交換が必要になります。また、ブラシは銅線でできており、摩耗によって粉塵が発生し、コミテータの定期的な清掃も必要になります。そのため、大型モータや長時間の運転が求められる制御機構では使用されなくなっています。
現在は、交流(Alternating Current)電源で動作するACモータを使用したサーボモータが主流となっています。
ではなぜACモータが主流なのでしょうか。
ACモータは、構造上ブラシがないため、DCモータの抱える問題を解消しました。しかし、開発当初はサイズが大きく高コストであることから、小型化と低価格化といった課題があり、DCモータに比べ複雑な制御が必要であるなどといった課題もありました。しかし、巻線の高密度化、高性能な永久磁石(ネオジム磁石)の開発による小型化、絶縁技術の進歩、半導体(IGBT)制御技術の実用化などによって課題を解消し、産業用ロボットや工作機械などで活躍しています。
サーボモータに必要な構成要素
サーボモータの重要な構成要素として、回転位置を検知するエンコーダがあります。また、エンコーダによって検知した回転位置をもとに、回転を制御するドライバ(サーボアンプ)も必要となります。
回転位置を検出するエンコーダ
エンコーダは、サーボモータに取り付けられている構成要素で、回転位置を検知し電気信号として送る役割を果たしています。 エンコーダの内部には無数のスリットを刻んだ円盤があり、モータの回転軸と連結されていて同時に回転します。円盤が回転すると光センサが通過したスリットの数をカウントし、信号として送ることで回転位置を検出する仕組みです。 エンコーダには、絶対的な位置検出ができるアブソリュートエンコーダと、相対的な位置検出ができるインクリメンタルエンコーダがあります。
電流調整をおこなうドライバ(サーボアンプ)
エンコーダで回転位置を検出したとしても、それだけではサーボモータはどちらに何度、どれくらいの速度で回転するかといった動きの制御はできません。
指令通りの動きをさせるために、モータへ与える電流を制御しているのがドライバです。
実際にどのような動きをどのような順番で行うかといったプログラムは、制御装置(PLC)やコンピュータなどによって決められており、そこからドライバには目標値が与えられます。ドライバはこの目標値に沿って、サーボモータへ送る電流を調整して供給する役割をします。
ドライバによって送られた電流でサーボモータは作動し、その状況をエンコーダが検出してドライバへと信号を返します。このエンコーダからドライバへと返す信号をフィードバック信号といい、ドライバはフィードバック信号と目標値を比較してその誤差を少なくするよう出力を調整します。
このフィードバック信号による制御が、サーボモータの正確性を高めています。
サーボモータとステッピングモータの仕組みの違い
サーボモータと同じように、外部からの信号によって回転位置を制御できるモータとしてサーボ機構に使用されるモータにステッピングモータがあります。
サーボモータは実際に回転した角度を検知して制御、ステッピングモータは回転するための信号の入力数で制御する、といった違いがあります。ステッピングモータも制御可能なモータという意味でサーボモータに含まれることもありますが、この二つは制御方式で区別されます。
サーボモータはエンコーダ(回転検出器)によって自身の回転位置を検知し、その情報とドライバとでやりとりすることにより、速度や位置を制御します。
一方、ステッピングモータは1パルスの入力によってどれくらい進角するかどうかが決まっていて、与えられた信号のパルス数にしたがい、所定の位置に回転します。例えば、1パルスの入力に対し1.8度回転するステッピングモータであれば、50パルスの信号を入力することで90度回転させることができます。
このように、サーボモータは実際に回転した角度を検知して制御し、ステッピングモータは回転するための信号の入力数で制御する、といった違いがあります。
では、サーボモータとステッピングモータのメリット・デメリットを整理してみましょう。
サーボモータのメリット・デメリット
サーボモータは、高速回転であっても回転制御により動きが滑らかなため、安定したトルクを発揮できます。また、回転位置を直接検知しているため高精度な位置決めが可能です。
ただし、エンコーダ(回転検出器)が必要であること、モータの動作を制御するサーボドライバが必要であることから、それらが不要なモータに比べてコストが上がります。また、正確な動作をさせるため、機構が複雑であることなどがあげられます。
ステッピングモータのメリット・デメリット
ステッピングモータは構造がシンプルです。また、エンコーダが不要なため、サーボモータに比べて低コストという特徴があります。
その一方で、高回転ではトルクが著しく落ちるため、素早い動作は得意ではありません。また、パルス電流によって動くため、負荷の急激な変動によってパルス信号とモータ回転との同期不良が起こる可能性があります。
サーボモータは現代の産業を支える重要部品
サーボモータの特徴、仕組みや動作に必要な周辺機器、他のモータとの違いなどを紹介しました。
サーボモータは「高精度な制御ができる」といった素晴らしい進化を遂げ、日常の生活に使われるものから先進技術を駆使した機械装置まで、幅広く使われています。
自動化や省人化が重要な現場では、サーボモータを使う装置が欠かせません。しかし、サーボモータの制御によってモータの回転速度とトルクを決めることは可能ですが、サーボモータが持つ能力以上の回転速度・トルクは出すことができません。そこで必要となるのが減速機です。
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参考:
- トコトンやさしいサーボ機構の本|Net-P.E.JP
- ACサーボモーターの概要|オリエンタルモーター株式会社
- 基礎から学ぶサーボモータの仕組み|富士電機株式会社