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サーボモータとは―使用例と求められる重要なポイント

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目次

回転位置や回転速度を制御できるサーボモータは、さまざまな機器に組み込まれて使われています。今回はサーボモータが使われている産業用ロボットや工作機械、安全装置などの使用例を紹介しながら、サーボモータに求められる要件と重要なポイントを考えます。

あらゆる産業で活躍するサーボモータ

サーボモータはシャフト(軸)を回転させるだけの一般的なモータとは異なる特徴を持っています。

その特徴とは、「どれくらいの速さでどちら方向に何度回転する」といった、思った通りの動きをさせることができるという点です。
正確な位置決めができるため、サーボモータを使った装置は精密な動作が可能です。
(サーボモータの仕組みについてはこちらで詳しく解説しておりますのでご覧ください。)

この特徴により、自動化機器や産業用ロボット、工作機械など、サーボモータが組み込まれた機器は数多くあります。
また、サーボモータは歯科医院で利用しているX線装置など、日常の身近なところで使われている例もあります。あらゆる場面で活躍しているサーボモータの使用例をみてみましょう。

サーボモータの使用例

サーボモータは次のような場所で使われています。

自動車製造ラインの産業用ロボット

日本の重要な産業の一つである自動車産業では、多くの産業用ロボットが使われています。
製造ラインにおいて、人に代わって産業用ロボットが作業することで、効率化と大量生産を実現しています。

自動車製造ラインでよく使われているのが、1本の腕のような形状をしたロボットです。溶接や塗装などの作業について、定められた動作を繰り返し行っています。この産業用ロボットの多関節を動かす動力として、サーボモータが使われています。

産業用ロボットは、自動車製造ライン以外のさまざまな産業でも普及が進んでいます。また、サーボモータ内蔵ロボットの重要性が今後ますます高まると予測されており、それに伴いサーボモータの重要性も上がっていくと考えられます。

工作機械の軸制御と回転テーブル

フライス盤や旋盤といった工作機械は、さまざまな機械の部品を作り出しています。
そのため、「機械を作るための機械」という意味でマザーマシンとも呼ばれ、全産業に対しても重要な役割を持っています。

これらの工作機械を進化させたマシニングセンタやターニングセンタといった工作機械は、多軸制御によって複合的な切削加工ができ、より全自動に近い加工が可能です。

XYZ軸に加え回転軸と傾斜軸での加工が可能な5軸制御が主流となりつつあり、あらゆる角度から加工を進めることができます。また、ATC(自動工具交換装置)によって機械が自動でマガジンに装着された切削工具を交換し、目的形状や仕上がりに合った加工を行います。

このような高度に進化した工作機械にも、サーボモータが使われています。

どれくらいの回転速度で切削工具を回転させ、どれくらいの角度や深さで切削を進めるのかといった条件は、切削加工において非常に重要です。また、ATCマガジンに準備された工具を交換していく動きも、精密な制御が必要で、サーボモータが得意とする分野です。

その他、回転式のテーブルにワークを設置し加工していく研磨機や、レーザー加工機やワイヤ放電加工機などの精密な切断加工をする機械にもサーボモータが使われています。

現代の工作機械は、CNC(コンピュータ数値制御)が主流です。工作機械がCNCによって加工を進めていく際、ワークを固定するテーブルや切削工具を取り付けた主軸などの正確な位置決めに、サーボモータはなくてはならない存在となっています。

電車の自動ドア

地下鉄をはじめとする一般的な電車のドアは、両側へ素早く開き、端までいくと減速してゆっくりと止まります。
反対に、閉まる際にはゆっくりと閉まり、両側のドアが近くなるとさらに速度を落として静かに接するようになっています。高速で運行される新幹線では、外部からの風や騒音を最小限に抑える必要があるため、ドアが正確な位置で停止し、密閉性を確保することが重要です。

プラットホームのスクリーンドアは、列車の到着や出発時に自動的に開閉することで、安全性や快適性を確保する役割を果たしています。

サーボモータは、このような正確な位置制御や速度制御が可能であり、電車のドアの開閉動作をスムーズかつ安定して行うのに適しています。また、密閉性が求められる場合にも、サーボモータの制御によって正確な位置で停止することができます

樹脂成形機の金型開閉や射出装置

プラスチック製品は生活用品や車の部品、さまざまな機器の外装部品まで、幅広く使われていますが、その成形法の一つとして、樹脂成型機を使った射出成形があります。

射出成形は、製品を作るために金型を使って樹脂を成形する方法です。このプロセスでは、金型を閉じて溶かした樹脂を高圧で注入し、冷却後に金型を開いて製品を取り出しますが、樹脂を金型の内部に均一に流し込むためには、高い圧力が必要です。

特に複雑な形状を作る場合には、樹脂の注入工程でスピードと圧力を段階的に変える必要があります。細い部分や太い部分を成形する際には、スピードと圧力を段階的に変えながら少しずつ行う必要があるためです。

その他、金型を閉じる際には、オス型とメス型が勢いよくぶつかることを避けるために、ゆっくりと閉じる必要があり、金型を開く際には取り出しロボットとの連動も必要です

このように、射出成形は複雑な工程が多く、製品を効率的に作るためには金型を動かすスピードも重要です。以前は油圧が主流でしたが、現在では要件を満たすため、サーボモータが一般的に使用されています。

歯科用X線装置

歯科医院で利用しているX線装置は、以前は患者が自ら顔の向きを変えてさまざまな角度のX線写真を撮るものが主流でした。しかし近年では、電動で高さを調節し顔の周りを回転しながらX線写真を撮影するものが多く使われています。

この高さ調整や回転の機構にもサーボモータが使われています。撮影が自動で行われ、患者は座ったまま体位を変える必要がないため短い時間で終わります。また、撮影室の外から制御できるため、撮影が終わるまで撮影者が出入りする必要もありません。

サーボモータに求められる特性

このように、さまざまな場所でサーボモータは使われています。その多くは、機器の内部に組み込まれ、一定の動作を繰り返し行っています。

これらのことから、サーボモータには次のような特性が求められます。

  • 耐久性
    負荷の高い繰り返し動作を行う部分に使われるため、高い耐久性が必要です。

  • 高い応答性と確実性
    サーボモータは、機械装置において正確な速度と位置決めが求められたり、安全装置での確実な動作が求められたりと、重要な部分に使われることが少なくありません。このような場面では特に、動作の応答性と確実性が必要です。

  • 小型・軽量化
    機器の内部に組み込まれるサーボモータはコンパクトさも重要です。省スペースで必要な出力が出せるサーボモータは、設計における優位性が高くなります。

幅広い分野で活躍するサーボモータ

サーボモータは、製造業で使われる産業機器から電車のドアや安全装置、医療機器まで、幅広い分野で使用されています。省人化や自動化の進展により、工作機械や産業用ロボットにとって欠かせない存在となっています。そのため、今後さらに需要が高まっていくのではないでしょうか。

さまざまな分野で重要な役割を果たしているサーボモータは、減速機と組み合わせて使われることも多いため、減速機もまた重要な役割を持っています。減速機は、サーボモータの回転速度を減速する代わりにトルクを増大する役割を果たします。これにより、モータのみでは出力がむずかしい大きな力が必要な領域にも対応することができるようになります。

減速機の適切な選択と設計は、サーボモータシステムの性能や効率に大きな影響を与えます。適切な減速機を使用することで、サーボモータの応答性や正確性を向上させることができます。

以上のように、サーボモータと減速機は相互に連携し、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

ナブテスコは、各社のモータに対応したコンポーネントやギヤヘッドタイプを提供し、国内トップシェアを誇っています。サーボモータと減速機の連携により、様々な産業分野での柔軟な対応が可能な体制を整えています。サーボモータのみでは困難な重量物の搬送など、モータの性能を活かした高度な位置決め制御や、自動化機器や産業用ロボット、工作機械の動作性能の向上をサポートします。お気軽にご相談ください。

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