• home
  • コンテンツ
  • アクチュエータ設計時の減速機とモータの組み立て課題を解決する方法とは(前編)

アクチュエータ設計時の減速機とモータの組み立て課題を解決する方法とは(前編)

アイキャッチ画像
目次

アクチュエータは、電気、空気圧、油圧などのエネルギーを物理的な運動に変換する装置です。自動ドアの開閉部やロボットの腕の動作部分など、私たちの生活に身近な機器から産業機械まで、幅広い分野で活躍しています。アクチュエータという用語は、アクチュエータシステムと混同されることがありますが、「アクチュエータ」は駆動部だけを指します。具体的にはモータや減速機などの個別の部品を含みます。一方、アクチュエータシステムは、これらの駆動部に加えて、制御システムやセンサーなども含む、システム全体を指します。

実際にアクチュエータを選定する際、既存のアクチュエータ製品ではシステムの要件を満たさないことも多いのではないでしょうか?さまざまな製品を調査しても、「これだ!」と思うものが見つからず、自分で減速機とモータを組み合わせるなどのカスタム設計が必要な場面も時にはあると思います。

今回のコラムは前編と後編に分かれており、前編ではアクチュエータの基本について振り返り、後編ではアクチュエータの設計における考慮点や、導入による作業の簡易化についてみていきます。さまざまな用途において最適なアクチュエータを選ぶためのポイントや、自動化を進める上で欠かせないアクチュエータの役割について、ぜひ一緒に考えてみましょう。

アクチュエータの基本

アクチュエータはさまざまな分野で、物体を「動かす」「止める」ために使われている装置のひとつです。アクチュエータがどのような場面で使われ、どういった役割を果たしているのか、改めて見ていきましょう。

アクチュエータとは、機械や電子機器で使用される装置で、外部からの信号やエネルギーを受け取り、物理的な動きを生み出します。代表的な動作原理として、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータがあります。それぞれ得意なこと不得手なことがあり、目的や用途に合わせて使うアクチュエータを選択します。

空気圧アクチュエータ

空気圧アクチュエータは、コンプレッサーから送られる圧縮空気を利用して動作します。一度動き出すと迅速な動きで動作し、なめらかな動作ができます。動力源が空気のため、火災や環境汚染のリスクも低いことが特徴です。

ただし、圧縮空気に含まれる水分や油分、異物がアクチュエータ内部に入り込むと、部品の摩耗や腐食、動作不良を引き起こす可能性があるため、適切なフィルタリングとメンテナンスが必要です。圧縮空気の品質の他、温度環境や強い振動、衝撃が加わるといった特定の使用状況や条件によってはリスクが存在する場合もあります。機械部も小型化しやすいですが、高度な制御や位置決めは得意ではありません。

油圧アクチュエータ

油圧アクチュエータは動作油の圧力を利用して動作します。制御システムから入力される信号に対して応答速度が比較的速いのも特徴です。これは、高い力密度、低圧縮性の作動油、高流量ポンプ、瞬時の圧力伝達、および正確な制御能力によるもので、これらの要素が組み合わさることで迅速かつ正確な動作を実現し、多くの産業用途で信頼性の高い動力源として利用されています。応答速度が速いほど動作の精度と効率が向上するため、重機や建設機械など、迅速かつ正確な動作が求められる用途では特に重要な要素となります。

ただし、用途やシステム設計によっては、システムの圧力供給が不安定であったり、配管の長さや直径が適切でなかったりした場合、またはバルブやポンプの性能が不足している場合、期待する応答速度が得られないことがあります。また、作動油の管理を含めた保守と火災のリスク、油圧源や配管といった付帯設備にスペースが必要となる点も考慮が必要です。

空圧式と油圧式は直線動作を行うシリンダとして多く使用されています。

電動アクチュエータ

電動アクチュエータは電気エネルギーを使って動き、精密な制御が可能なアクチュエータです。主に回転動作に使用され、指示が与えられてから動き出すまでの応答性にも優れています。高精度な位置決めが可能であり、産業用ロボットや精密機器、医療機器などで広く利用されています。

電動アクチュエータは一般的にモータを使用して動作しますが、モータが直接アクチュエータに接続される場合、モータの回転数やアクチュエータの動作速度や力の関係を調整する必要があります。この調整には、モータの出力を適切に伝えるための減速機が不可欠です。

減速機はモータからの回転を適切な速度やトルクに変換し、それをアクチュエータに伝える役割を果たします。そのため、電動アクチュエータでは減速機が動作原理において重要な役割を担っています。

電動アクチュエータはモータ、減速機、エンコーダーなどの構成要素を持ち、これにより高い制御性と再現性が得られます。また、電気エネルギーを使用するため、環境に対する影響が少なく、クリーンルームなどの特殊な環境でも使用が可能です。

ただし、電動アクチュエータは電動モータや制御回路の複雑さから、初期コストが高くなる場合もあります。また、長時間の連続運転や過負荷がかかるとモータの発熱が問題となるため、適切な冷却や保護機構が必要です。減速機を使用することで、電動モータの回転を適切な速度やトルクに変換することができますが、電動モータの性能や減速機の仕様が不適切である場合、期待される動作が得られないことがあります。

アクチュエータの特性や用途を理解することは、正しい選定のための第一歩です。アクチュエータはさまざまな動作を実現するために設計されており、必要な動作速度、得られるトルク、動作の精度などを考慮することで、適切なアクチュエータを選ぶことが可能になります。

電動アクチュエータの種類

空気圧や油圧を利用したアクチュエータは、それぞれの圧力を介して動力を伝達し、多くの産業で広く使用されています。しかし、近年の技術進展により、電動アクチュエータがますます重要視されています。その中にはサーボモータやステッピングモータも含まれ、特にサーボモータは、精密な制御と高い効率性の実現が可能で、現代の自動化技術においても不可欠な役割を持ちます。

電動アクチュエータにはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして次の3種類を紹介します。

サーボモータ

サーボモータは、高速かつ高精度な位置制御を実現するために設計されたモータです。通常、エンコーダーが搭載されており、フィードバック制御を行うことで、実際の位置を常に監視し、目標位置に対して正確に動作します。例えば、サーボモータが特定の位置に移動する際、エンコーダーが現在の位置を検出し、必要な調整を行います。このフィードバックにより、負荷の変動にも迅速に対応し、精密な位置決めが可能です。

サーボモータはトルクや回転数の制御範囲が広く、急激な加減速にも強いため、ロボットアームやCNC機械、医療機器など、高い精度と応答性が求められる用途で広く使用されています。

サーボモータは複雑な制御が必要なため初期コストが高くなることがありますが、その高性能から多くの自動化システムにおいて不可欠な要素となっています。特に、高速で複雑な動作が必要なアプリケーションにおいて、その特性が大いに活かされます。

【関連記事】サーボモータとは―使用例と求められる重要なポイント

ステッピングモータ

ステッピングモータは、一定の角度で断続的に回転し、正確な位置決めを行うモータです。通常、エンコーダーは搭載されていないため、位置決めはステップ数に依存し、必要な回転数をステップ数に変換して制御します。例えば、1.8度のステップ角を持つモータを90度回転させる場合は、50ステップの指示を出す必要があります。この場合、モータに送る信号(送る量)は、50ステップ分のパルス信号になります。

モータに対して与える信号(ステップ数)が常に同じであるため、負荷が変動しても指定したステップ数に従って回転することができます。ただし、実際には負荷が大きくなると、モータがその位置に到達できないこともありますが、理論的には、送る量が一定であれば同じ位置まで回転できます。

動かすと位置がずれやすかったり、負荷が変動しやすい製品でも、ステッピングモータは高精度な位置制御が可能で、負荷の変化にも対応しやすい特性があります。そのため、位置ずれが致命的な問題となる3Dプリンターや半導体製造装置、負荷が一定ではない複雑な条件が求められる印刷機などに適しています。

【関連記事】サーボモータとは―特徴と仕組み、ステッピングモータとの違いを解説

リニアアクチュエータ

電動アクチュエータは一般に「モータ」として称されることが多い一方で、リニアアクチュエータは「アクチュエータ」として称されます。リニアアクチュエータは、その主な機能が直線運動の生成にあり、回転運動からの変換が含まれるためです。リニアアクチュエータは、電気エネルギーを利用して直線運動を生成する装置で、電気の他油圧、空気圧などの原理で動作するリニアアクチュエータもあります。いずれも直線運動での高速移動や高精度位置決めが可能です。

リニアアクチュエータは負荷に応じて力を調整することができ、精密な直線運動を実現します。そのため、工作機械の位置決めに用いられます。例えば、切削工具の精密な位置調整や、加工対象物の正確な配置なども可能です。

また、自動ドアではスムーズで静かな開閉動作を実現します。さらに、医療分野ではCTスキャナーのような医療機器で、患者を正確な位置に移動させるために使用されています。

サーボモータとステッピングモータは、どちらも位置決めに使用されるモータですが、位置決め方法においては明確な違いがあります。また、サーボモータやステッピングモータが回転運動を求められるのに対してリニアアクチュエータにおいては、主に直線運動を実現するために設計されています。このように、モータの特性や違いを理解することは、システム設計において非常に重要であり、最終的には効率性や信頼性が向上したシステムを構築するための鍵となります。

モータの特性理解が効率的なアクチュエータ選定の鍵

前編ではアクチュエータの基本について解説しました。アクチュエータの多様性とその特性を理解することで、私たちはより適切な選択を行うことができます。その結果、システムの効率性や信頼性を向上させることができ、最終的にはコスト削減や生産性の向上につながります。

次回の後編では、アクチュエータの設計における考慮点や、導入による作業の簡易化についてみていきます。自動化技術の発展において、これらの要素がどのように重要な役割を果たすのか、ぜひご確認ください。


導入予定のモータから、または減速機の製品タイプと取付方法から選んでいくだけで適切な減速機が選定されます。ぜひご活用ください。

導入予定のモータに使える精密減速機RV™が知りたい! 簡易選定ツールはこちら!