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高精度・高剛性で実現するポジショナーの役割と重要性|産業用ロボット溶接・組立・塗装における位置決め精度向上

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目次

現代の製造業では産業用ロボットが多岐にわたる作業を自動化し、生産効率と品質の向上に貢献しています。これらのロボットを支え、作業をより効率化するのがポジショナーです。ポジショナーは、ワークを特定の位置に正確に配置するための補助装置であり、様々な生産ラインで不可欠な役割を果たしています。本記事では、ポジショナーの基本、種類、仕組み、そして導入するメリットについて解説します。

ポジショナーの基本と仕組み:自動化を支える技術

多くの分野で「ポジショナー」という装置が使われていますが、どのような役割を果たすものがポジショナーと呼ばれているのでしょうか。また、工場の自動化において用いられるポジショナーとはどのようなものでしょうか。ポジショナーの概要から見ていきましょう。

ポジショナーとは?産業用ロボットの効率を高める重要な補助装置

ポジショナー(positioner)とは、外部からの指令に従って、物体を特定の位置や姿勢に移動・調整するための装置の総称です。物体の角度を変えたり、回転させたり、正確な位置に配置したりと、用途に応じた調整を行うために使われます。

産業用途におけるポジショナーの役割

製造現場などの工業分野では、ポジショナーはモータやシリンダーなどの駆動装置を用いて、ワーク(加工対象物)を最適な姿勢に調整するために使用されます。これは、ロボットや工作機械が正確かつ効率的に作業を行えるようにするためで、ワークを傾けたり回転させたりすることで作業性が大きく向上します。

特に、複数の機械が連動して動くような自動化された製造ラインでは、ポジショナーには高い位置決め精度が求められます。加えて、繰り返し動作に耐える耐久性や、高速で動かせる性能も重要なポイントです。

ポジショナーの基となるポジショニング技術は、工業分野に限らず様々な分野で活用されています。たとえば医療分野では、患者の体を固定する器具や治療装置に応用され、測位分野(GPSなど)では、正確な位置を特定するための装置として、プリンターなどの印刷機器では、用紙やヘッドの位置合わせ機能に組み込まれています。

このように、ポジショナーは「正しく動かす・正しく止める」という基本機能を通じて、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

製造現場で活躍するポジショナーの主な種類

製造現場のポジショナーにはさまざまな種類があり、それぞれ特定の用途や機能に応じて設計されています。以下に代表的なポジショナーの種類を紹介します。

ワーク支持ポジショナー:
加工中のワークをしっかりと支持するためのシンプルな構造。固定用治具やクランプと組み合わせて使われることが多いです。

旋回ポジショナー(回転ポジショナー):
水平または垂直軸に沿って回転し、ワークの角度を自由に調整できます。溶接用ポジショナーによく見られます。

【参考:ナブテスコ製 BBQポジショナーユニットRVP-B 

傾倒ポジショナー:
サイズの大きなワークを傾けることで、高い位置にある作業対象や工具、または部品を持ち上げたり、アクセスしやすい位置に調整したりできます。それにより作業しやすい姿勢に調整が可能になります。旋回機構と組み合わせて「2軸ポジショナー」になることも。

【参考:片持ち2軸ポジショナー駆動モデル(使用ギヤヘッド:RH-155CRS-50A)】
 

多軸ポジショナー:
傾倒・旋回・昇降など、複数の軸でワークを制御できる高機能タイプ。ロボットシステムと連携するケースが多いです。

インデックスポジショナー(割出しポジショナー):
一定の角度ごとに正確な位置決めを行えるタイプ。組立ラインや自動化設備で活躍します。

【参考:精密減速機RV™ RS インデックステーブル用への搭載例】
 

FAにおけるポジショナーの役割

FA(ファクトリーオートメーション)では、ポジショナーは加工機械の自動化において不可欠です。例えば、溶接ロボットの作業では、ロボットが効率的に溶接を行えるよう、ポジショナーがワークを理想的な角度に保持し、ロボットの作業を支援します。

ロボットが効率的に溶接を行えるよう、ポジショナーがワークを理想的な角度に保持し、ロボットの作業を支援する様子

言うなれば、右利きの人が手帳にメモをする際に、右手でペンを持ちながら左手で手帳を持って書きやすい向きに調節し、動かないように保持している様子を想像してください。この場合、左手が担っているのは、ポジショナーが果たす役割と同じです。

ロボットは多様な角度に動きながら溶接を進めていきますが、ロボットの動きだけでは理想の作業角度を実現できないことがあります。また、理想の角度に調整できたとしても、その角度に移動するのに時間がかかり、結果として生産サイクルが低下することもあります。

このような場合には、ポジショナーがワークを理想の角度に傾け、溶接ロボットと連携して動くことで、作業の最適化が図れます。

ワーク支持ポジショナー:精密作業を可能にする構造と機能

ポジショナーは、産業用ロボットや自動化システムにおいて、作業物(ワーク)の位置決めを行うための重要な装置です。作業効率を高め、位置決め精度を向上させるために、さまざまな種類のポジショナーが存在します。中でも、構造が比較的シンプルで使用頻度の高い「ワーク支持ポジショナー」は、ポジショナーの基本形ともいえる存在です。

ここでは、このワーク支持ポジショナーの構造と分類について解説します。

ポジショナーの構造

ワーク支持ポジショナーは、「位置決め精度」「駆動力」「ワークの固定方法」の3つが主要な機能となります。

連続生産ラインでは、ワークごとに専用の治具を設けて固定する方式が一般的です。一方、試作や少量生産の現場では、T溝テーブルとクランプを用いて柔軟にワークを固定できるテーブルポジショナーが採用されます。

高精度な位置決めを支える剛性の重要性:
ポジショナーには、高い位置決め精度と繰り返し動作に対する安定性が求められます。特にロボットによる溶接や加工の現場では、ワークに対して大きな反力や振動が加わるため、ポジショナー自体に剛性がなければ、構造のたわみが精度に大きく影響してしまいます。そのため、ポジショナーには「動かないこと」=高い剛性が不可欠です。剛性が高いことで外乱の影響を受けにくくなり、制御も安定。狙った位置に正確に停止できるため、ポジショナーの性能を最大限に引き出す“土台”となります。

モータと制御システムの選定:
位置決めの精度は、主に制御システム、モータの性能、減速機の能力によって決まります。ポジショナーに最も多く採用されているのは、精密な制御が可能なサーボモータです。軸の回転角度や速度を細かく制御でき、高い再現性を持っているため、位置決めに最適です。一方、重量物を扱う現場では油圧モータが使われることもありますが、単独では精密な位置制御が難しく、回転速度もサーボモータに比べて遅いという特徴があります。

減速機の役割と精密減速機の特長:
サーボモータは、単体では大きなトルクを出すのが難しいため、減速機との組み合わせが重要です。減速機は、モータの回転数を落とすことでトルクを増加させる装置で、重量物の位置決めや少ない出力で大きな力が必要なシーンで活躍します。中でも、繰り返し精度や安定性が求められる工程には、精密減速機が用いられます。精密減速機は歯車のバックラッシ(遊び)やブレが極めて小さく、再現性の高い位置決めに優れています。さらに、高剛性設計のタイプを選べば、反力や振動の影響を受けにくく、安定した位置決めが可能です。

このように、適切にサーボモータと精密減速機を選んだポジショナーは、重量のあるワークを精度高く、任意の角度に位置決め・保持することが可能になります。

ポジショナーの分類

ポジショナーは1軸タイプや2軸タイプなど、回転する軸の数や方向によって分類されます。それぞれのタイプは、特定の作業に適した角度調整を可能にします。

1軸ポジショナー:
1軸を基準として回転するタイプのポジショナーです。バーベキューで串を回して焼くように、1軸を中心に回転させる構造から「BBQポジショナー」と呼ばれるタイプや、ターンテーブルのような回転をするタイプがあります。

【参考:片持ち1軸ポジショナー駆動モデル(使用ギヤヘッド:RH-900C)】
 

2軸ポジショナー:
2軸に対して回転・傾斜させるタイプです。これにより、ワークを保持するテーブルを傾けたまま回転させることができ、多角度の調整や複雑な作業に適しています。例えば、溶接や組立工程で、多角度からの作業や細かな角度調整が必要な場合に重宝されます。

【参考:ナブテスコ製 傾倒機構付きターンテーブルユニットRVP-C】 
 

ポジショナー導入のメリット:品質と生産性を向上

製造や加工の段階ごとに、最適な位置決めや姿勢制御を行えるポジショナーの導入をすることで、次のようなメリットが得られます。

高精度な位置決め:製品品質の一貫性を保つ

ポジショナーは高い位置決め精度を持っているため、ワークを正確な位置に繰り返し配置することができます。この再現性の高さは、製品の品質を一定に保つために非常に重要です。特に、溶接や塗装などの工程では、ワークの位置が少しでもずれると品質に大きな影響を与えます。

ポジショナーを導入することで、これらの工程における品質のばらつきを最小限に抑え、高い品質の製品を安定して生産することが可能になります。

作業性の向上:最適な角度でのワーク保持

ロボットが作業を行う際、ワークの角度によって作業の難易度が大きく変わります。例えば、アーク溶接作業では、溶接箇所に対して適切な角度でトーチを当てることが重要です。ポジショナーを導入することで、ワークを最適な角度に保持し、ロボットが常に理想的な位置から作業を行うことができます。ワークを着脱せずに1チャッキングで溶接を可能にする範囲を広げることもできます。

これにより、溶接の品質が向上し、不良品の発生を抑えることが可能です。同様に、塗装作業においても、ワークの角度を調整することで、ムラのない均一な塗装を実現できます。

生産サイクルの短縮:ロボットとポジショナーの連携

ポジショナーを導入することで、ロボットとワークの動きを連携させることができます。その結果、ロボットがワークの位置合わせを待つ必要がなくなり、作業の無駄な待機時間を削減できます。これにより、生産サイクルの短縮や作業効率の向上が期待できます。

例えば、ポジショナー上の2箇所でワークを保持し、作業エリアとワーク交換エリアを分離すれば、ロボットが溶接作業を行っている間、交換エリアでは搬送用ロボットや自動化設備、人によって溶接が完了したワークを次に溶接するワークに入れ替えおくことができます。ロボットは溶接作業を終了次第、ポジショナーがワークの入れ替えを行い、次のワークに取り掛かることができます。それによってロスタイムが削減され、生産効率が大幅に向上します。

生産サイクルの短縮は、生産能力の増強とコスト削減につながり、企業の競争力強化に貢献します。

ポジショナーの導入で自動化に効率をプラス

ポジショナーの役割や種類、使用されているシーンなどをご紹介しました。

ポジショナーの導入は、自動化の推進だけでなく、工場全体の生産性向上に大きく寄与します。高精度な位置決めや角度調整を可能にすることで、従来の作業では難しかった複雑な工程もスムーズに行え、製品の品質安定や作業時間の短縮につながります。さらに、ロボットと連携させることで、作業の無駄や待ち時間を削減し、ラインの柔軟性や生産効率を飛躍的に高めることが可能です。ポジショナーは、単なる補助装置を超え、未来のスマートな生産現場を支える重要なキーコンポーネントとなっています。

こうした背景から、ポジショナーの導入・見直しを検討される企業も増えています。自社の生産設備に適した製品選定や導入計画を立てることが、今後の製造現場の最適化につながります。

ナブテスコ精機カンパニーでは、多様なサーボモータに対応し、ロボットとの協調作業が可能な「高精度」「高剛性」「高信頼性」を備えたポジショナーユニットRVPシリーズをはじめ、最大9トンまで積載可能なインデックステーブル用ギヤヘッドRSシリーズなど、ポジショナーに適した精密減速機を提供しています。ポジショナーユニット導入をご検討の方はこちらをご覧ください。


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