【メカナム駆動ユニットRVW 導入事例】
株式会社 牧野フライス製作所 様
株式会社牧野フライス製作所様(以下 牧野フライス製作所様)は、マシニングセンタやフライス盤などの製造販売を行う工作機械メーカーです。長きにわたり工作機械を使った製造現場の自動化にも取り組まれており、搬送および移動先における作業の自動化を目的に開発された「製造支援モバイルロボット iAssist」の駆動部にナブテスコの「メカナム駆動ユニット RVWシリーズ」を採用いただいています。今回は導入に至った背景や選定理由などのお話を伺いました。
メカナム駆動ユニットRVW導入の背景
手探り状態の自社開発、課題は山積みだった
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牧野フライス製作所様では、製造現場における搬送および作業の自動化を実現するため、2017 年初頭より自動搬送車(のちのiAssist)の開発プロジェクトを始動しました。当初は市販のAGV/AMRを用いて製品化する方向で進めていましたが、製造現場の要求を満たすには多くのカスタマイズとフレキシビリティが不可欠であり、かつ迅速な対応を実現するために自社開発が必要と判断されました。しかし、新たな取り組みのためノウハウも無く、手探り状態からの開発スタートであったため、課題は山積みでした。 iAssistは製造現場をターゲットとしているため、機械や多種多様な周辺機器で構成される複雑なレイアウトでも移動可能な機構や形態が必要とされました。また、移動先における位置決めを容易にかつ高精度に行えること、高い耐環境性能を持つことを要求され、その全てを満たす駆動機構を探していました。
選定理由
要求のすべてを満たせる製品はRVWシリーズしかなかった
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要求を満たす製品を探している中、とある展示会でナブテスコのRVWシリーズと出会い、「これがあれば我々の望む自動搬送車の自社開発が可能だ」と確信し、開発をスタートしました。
製品を検討するうえで重視したポイントは「可搬重量」「耐久性」および「サイズ」。RVWシリーズはその全ての要求を満たしていました。RVWシリーズに組み込まれている精密減速機RV™の信頼性の高さと、国産である点も評価いただき、採用が決まりました。
採用のポイント
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POINT01
可搬重量
RVWシリーズは精密減速機RV™をベースとした高容量主軸受を内蔵しており、高荷重に最適な構造となっています。iAssist に採用されているRVW-10PG は、4輪構成の場合、車体+積載物の総重量1,500kgf(推奨値)まで支えることができます。
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POINT02
耐久性
CAE解析と試験の積み重ねによる形状・材料の最適化を行い、高耐久性を実現。iAssistに採用されているRVW-10PG は、耐久性(走行可能距離)8,000km(※1)を謳っており、実稼動を想定した条件(※2)においても十分な耐久性を有する試算結果が出ています。
※1:ナブテスコ設定の試験条件(負荷:250kgf、速度:60m/min)による参考値
※2:牧野フライス様設定の試算条件による参考値
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POINT03
サイズ
RVWシリーズは、減速機が一体となったインホイール構造を採用しており、従来の減速機+モータを取り付ける方式に比べて駆動部がコンパクトになります。車体のスリム化や車体空間の有効活用に貢献でき、車体設計の自由度を高められます。
導入後
“製品精度の高さ”気に入っています
前述のようなRVWシリーズの強みを生かし、iAssist の高性能な自動走行を実現する”足”として活躍しています。
その他、RVWシリーズを採用したことによるメリットを3つご紹介します。
RVWシリーズ採用のメリット
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POINT01
全方位移動でシームレスな自動走行を実現
iAssistは独自のアルゴリズムによる自己位置推定機能により、目的地を設定するだけでルートを自動生成して走行します。また、高性能センサによりリアルタイムに障害物をセンシングし、回避ルートを自動生成することで、停止することなく運用可能。RVWシリーズによる全方位移動を活かし、複雑なレイアウトの走行もシームレスに対応できます。特に狭い場所での機動性に優れており、方向転換せずに全方位移動できる点はメカナムホイールのメリットと言えます。
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POINT02
高精度位置決めを実現
搬送の自動化において、走行動作のみならず目的地における位置決め精度は非常に大切な要素になります。RVWシリーズによる全方位からの接近や微小な移動により、容易かつシームレスに高精度な位置決めを行うことができます。iAssistの高精度位置決め機能をサポートし、±10mmの位置決めを実現しています。
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POINT03
音、振動の無い滑らかな走行
RVWシリーズは各構成部品の製作精度が高く、かつ高精度な組立技術(完成品の寸法精度、バラツキの少なさ、ガタが無い)により、iAssistが走行中に発生する音や振動を効果的に抑制します。これにより、静かな工場環境が可能となり、振動による搬送物への影響も最小限に抑えられます。
今後の展望
iAssistは用途に合わせ、重量物搬送に適した「標準仕様」、パレット等を持ち上げて搬送可能な「リフタ仕様」、移動先での作業も自動化する「ロボット仕様」の3種類をラインナップ。今後も多様な製造現場の使用環境に合わせ、現行車体のブラッシュアップやバリエーション展開に挑戦し続けます。
ナブテスコ 担当者の声
私が牧野フライス製作所様と初めてお会いしたのは展示会でした。当時構想されていた「工作機械を24時間稼働させるために協働ロボットをAMRに搭載する」というアイデアを伺ったことをよく覚えています。日本の少子高齢化や人手不足を背景に、牧野フライス製作所様が生産性向上を目指していることが伝わってきました。
特に印象的だったのは、狭いスペースでのスムーズな動きが求められている点です。2輪速度差方式では微細な動きが難しく、ステアリング付き4輪駆動では舵切りの間にAMRが停止してしまいタクトタイムがロスしてしまう。牧野フライス製作所様が目指していた「人に代わり、かつ狭いスペースをスムーズに動く事ができる“足”」として、メカナム方式のRVWシリーズを採用いただくことになりました。
牧野フライス製作所様には長年、工作機械にナブテスコの精密減速機RV™を継続的にご使用いただいており、ナブテスコ製品の品質や性能を認めていただけていることも、今回の採用の理由になったかと思います。「ナブテスコの製品なら信頼して使用できる」とのお言葉が、私たちにとって何よりの励みです。
牧野フライス製作所様との関係が深まる中で、新しい挑戦を共に続けていけることを嬉しく思っています。(営業担当)
株式会社 牧野フライス製作所 様
会社概要
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■事業内容
マシニングセンタ・NC放電加工機・NCフライス盤・フライス盤・レーザ加工機・CAD/CAMシステム・FMS等の製造・販売・輸出
■拠点
【本社】東京
【国内工場】厚木(神奈川)、富士勝山(山梨)
【営業拠点】東京、大阪、名古屋など17ヶ所
【海外】米国、ドイツ、シンガポール、韓国、中国、インド 他
■ウェブサイト
・ホームページ(https://www.makino.co.jp/ja-jp)
・iAssist紹介ページ(https://www.makino.co.jp/ja-jp/machine-technology/automation/mobile-robot/iassist_system)
用語集
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メカナム駆動ユニットとは?
メカナム駆動ユニットは、メカナムホイールを使用して全方向に移動できる駆動システムです。メカナムホイールは、車輪の周りに斜めに配置されたホイールによって、前後斜めだけでなく、左右にも滑らかに移動が可能です。
メカナムホイールは、制御システムの複雑さや、ハードウェアの統合、部品の選定と設置に知識と技術が求められるため、導入には高度な技術が必要です。しかし、ユニット化されることでこれらの課題が簡略化され、導入にかかる時間やコストが削減されます。これにより、全方向移動を必要とするシステムやロボットへのスムーズな組み込みが可能になります。 -
メカナム駆動ユニットRVWシリーズとは?
RVWシリーズは、メカナムホイール、減速機、モータフランジ、入力軸を一体化したメカナム駆動ユニットです。この一体化により、設置が簡素化され、導入が容易になります。また、ユーザーは自分のシステムに合わせたモーターや制御装置を別途選定することができ、ニーズに応じたカスタマイズが可能です。
このシリーズは、精密減速機RV™を搭載しており、高い可搬重量と耐久性を実現しています。
詳細についてはこちらのページをご覧ください。 -
自動搬送車(AGV/AMR)とは?
自動搬送車(AGV: Automated Guided Vehicle / AMR: Autonomous Mobile Robot)は、物品や材料を自動で搬送するための無人車両です。AGVは通常、事前に設定されたルートに沿って移動しますが、AMRは自律的に環境を認識し、障害物を避ける能力を持っています。このような自動搬送車は、製造現場や倉庫などにおいて、物品や材料の搬送を効率的に行うことが期待されています。
「ナブテスコで完成品のメカナム台車(AGV/AMR)として提案してほしい」
というご要望にお応えし、主要パーツのパートナーメーカと協業体制を構築しております。
AGV/AMR製作のワンストップ提案も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。