小型精密減速機「RVmini®」の開発背景
量産化と差別化への取り組み
40年以上にわたり、産業用ロボットの基幹軸(1〜3軸)中心に圧倒的な信頼を築いてきた、ナブテスコの精密減速機RV™。その確かな実績を礎に、私たちは今、さらなる領域へと踏み出します。

新たに誕生した「RVmini®」は、サイズや構造の制約により対応が難しかった小トルク領域をカバーする、待望の小型精密減速機です。
このラインナップの拡充により、全関節をナブテスコの技術で統一する「オールナブテスコ」のトータルソリューションがついに完成しました。
特に、近年の市場ニーズである可搬20kg以下の小型ロボットにおいて、その真価は際立ちます。
コンパクトながら高い剛性とトルク密度を両立した「RVmini®」は、軽量化が至上命題となるアーム先端軸に最適です。これにより、精密減速機RV™シリーズは小型から超大型までシームレスな型式選定を可能にしました。
本記事では、RVmini®の開発背景と、製品化・量産化に向けてどのような課題を乗り越えてきたのかをご紹介します。
RVmini®とは
RVmini®は、これまでナブテスコが培ってきた産業用ロボット向け精密減速機の技術を、小トルクという新たな領域へ展開するために開発されました。
「高トルク」「高剛性」「高耐久」という精密減速機RV™のDNAを継承しつつ、小トルク領域の「小型・軽量化」「高回転化」そして配線を通すための「中空構造」といった高度な要求に応えるべく、ゼロベースで設計を見直しました。これにより、ナブテスコの精密減速機RV™は、産業用ロボットの全関節をカバーするラインナップへと進化を遂げました。

小トルク領域特有の難題に挑んだ、新たな設計思想
「従来の設計基準では太刀打ちできない、考え方が全く違う。図面を成立させるだけでも、非常に難しかったですね」
設計担当者は、開発当時をそう振り返ります。
従来のプラノセントリック方式を用いた従来のRV™をそのまま小型化するだけでは、手首軸をはじめとした小トルク領域に求められる要件に対応できませんでした。
小トルク領域では、軽さ、省スペース性、中空構造、高減速比など、複数の条件を限られたサイズの中で両立させる必要があったためです。
この難題を解決すべく、長年培ってきたプラノセントリック方式の延長線上ではなく、全く異なる原理である「波動歯車式」減速機の開発に踏み切りました。
とはいえ、当社にとっても、この領域で開発の手がかりとなる製品は多くありませんでした。
そのため、必要な性能を成立させるための設計を一つずつ積み上げていきました。
こうして10種類以上の試作機を製作し、数百回に及ぶ試験を重ねる中で、RVmini®に求められる性能の方向性を具体化していったのです。


精密減速機で量産精度を揃えることが難しい理由
「原理的には成立する設計であっても、それを実際に現場で製造するのは極めて難しい図面でした」
設計の方向性が固まり、試作機で一定の見通しが得られると、次に課題となったのが製造工程の構築です。
開発と生産技術が重ねた、徹底したすり合わせ
この段階では、設計開発と生産技術のメンバーが何度も議論を重ねました。
RVmini®の生産技術をリードした担当者は、当時を次のように振り返ります。
「数えきれないほど議論を重ねましたが、どちらかが簡単に折れることは一度もありませんでした。
設計の言い分も、生産技術の言い分も、すべては製品の質を追求してのことだったからです。
もし、現場の困難を無視して設計図通りに進めたとしても、高い部品精度のままでの製造が追いつかなければ製品精度が損なわれます。かといって、作りやすさのために設計を妥協することもできません。
『どうすれば、この高い理想を現実の製品として成立させられるのか。』
その答えを求めて、毎日必死に考え抜いていました」
精密減速機の開発において、技術そのものと同じくらい難しいのが、量産で精度を揃えることです。
精密減速機では、部品一点一点の精度だけでなく、組み上げた後に発揮される総合性能が重要になります。
そのため、計算や図面上で性能が成立するだけでは不十分です。
設計から検査まで、一体で磨き込んだ品質
実加工・組立では必ず誤差や変動が生じるため、加工・組立・量産の過程で性能がばらつかないように管理し、同じ性能を再現できて初めて製品として成立します。
その実現には、たとえば次のような技術や管理体制が欠かせません。


こうした要素のどれか一つでも欠けると、安定した製品にはなりません。
たとえば、試作品では良好な結果が得られても、量産段階で精度が崩れてしまえば、製品としての価値を十分に発揮することはできません。
設計、材料、加工、組立、検査、評価まで、すべてがつながって初めて、量産に耐える品質が成立します。
そのため、RVmini®の開発では、設計と並行して生産工程の構築にも取り組みました。
理論上は成立する設計を、実際の製造現場で安定して再現できる形へどう落とし込むか。
この課題に対して、開発と生産の両面から検討と改善を重ねることで、試作レベルの成立性を量産レベルの再現性へと高めていきました。
このように、RVmini®は単に性能を追求して生まれた製品ではありません。
量産性と品質の安定性まで見据えた、現実的な製品化プロセスを通じて磨き込まれてきたのです。
実運用を見据えた評価で見えてきた課題
試作品の評価を進める中で、設計段階では想定していなかった課題も浮かび上がってきました。
それは、想定していた評価条件と、実際の現場での運用条件との間に生じる差です。
製品開発において、実際の使われ方を完全に把握することは容易ではありません。
しかし、この差を放置すれば、採用後の性能や信頼性に影響します。
そこで当社は、設計開発と生産技術チームが一体となり、不具合の要因を丁寧に分解していきました。
感覚的な調整に頼るのではなく、数値や図を用いて現象を徹底的に見える化しました。
負荷のかかり方、熱の伝わり方、摩耗の進行状況などをデータとして整理し、理論と現場の乖離を埋めていきました。
こうした地道な評価と改善の積み重ねが、実運用環境での信頼性向上につながっています。
差別化につながった潤滑剤の改良
製品として基準を満たすことは、スタートラインに過ぎません。
競合製品が並ぶ中で選ばれるためには、お客様にとって明確な導入メリットとなる強みが必要でした。
その突破口となったのが、潤滑剤の見直しです。
小型減速機は、限られた空間で高負荷を支えるため、潤滑剤の選定が性能を大きく左右します。
当社はRVmini®の構造に最適化した潤滑剤も同時に開発しました。
この潤滑剤とセットで使用頂くことにより、長期間に渡り安定した性能を発揮できるという強みが生まれ、
結果として、高い信頼性と省スペース性が求められる小型ロボットの関節部や精密搬送装置の駆動ユニットにおいて、装置全体の信頼性向上に貢献できる製品として採用につながっています。
RVmini®が提供する価値
RVmini®が提供するのは、単なる小型の減速機ではありません。
小型ロボットや精密搬送装置において、剛性、耐久性、量産性、メンテナンス性を高い水準で長期間成立させ、安定運用を支える価値です。
市場には同種の製品も存在します。
その中で当社が選ばれる理由は、開発・製造・材料のすべてにおいて、量産時の安定品質を前提とした設計思想を貫いている点にあります。
設計と生産が一体となって磨き上げたRVmini®は、ロボットの設計自由度を広げ、装置全体の性能向上を支えるパートナーとして、お客様のものづくりに貢献します。

RVmini®の仕様・用途について

小型精密減速機「RVmini®」の仕様や用途について詳しく知りたい方は、リーフレットをご覧ください。
(より詳細な製品カタログは今後公開予定)