【ギヤヘッドRD2シリーズ 導入事例】
林エンジニアリング株式会社 様
高トルク・高耐久性で信頼を獲得!
ブロッコリー選別自動収穫機の開発に貢献
近年、日本の農業は高齢化による農業人口の減少や食料自給率の低下など、多くの問題を抱えています。農林水産省では、“生産性向上”や“労働力不足の解決”、“持続可能な農業の実現”を目的としてスマート農業の普及を推進しており、その一環として「スマート農業実証プロジェクト(2019年度~)」が始まりました。元々、農業機械の電動化システムの開発を行っていた林エンジニアリング株式会社(以下、林エンジニアリング様)も2022年度から研究チームの一員として本プロジェクトに参加し、「ブロッコリー選別自動収穫機」の開発・製造を行っています。
※本プロジェクトは生物系特定産業技術研究支援センター(略称:生研支援センター)の「戦略的スマート農業技術等の開発・改良」(JPJ011397)にて実施しています。
ブロッコリー選別自動収穫機とは?
ブロッコリーの収穫作業は、外葉や茎のカットだけでなく、1株ごとに花蕾(からい)の大きさを確認して収穫時期を見極める必要があり、多くの時間と労力が必要です。林エンジニアリング様が開発している「ブロッコリー選別自動収穫機」は、収穫時期を迎えたブロッコリーをAIにより選別し、収穫から外葉・茎のカット、回収までを自動で行うことができます。手作業での収穫作業に比べ、労働時間を80%削減することを目指して開発が進められています。


導入前の課題は?
「大きな負荷に耐えられる耐久性の高い減速機を探していました」
開発当初、海外メーカおよび国内メーカ2社の減速機を採用し、開発を進めていました。しかし、凹凸のある畑を走行したり収穫機を移送用トラックに載せる際に減速機に大きな負荷がかかり、減速機が早期に破損しました。また、モータの過負荷エラーが発生し、十分なトルクを得られず走行不能になるといった問題もあり、開発は難航していました。
そこで、クローラーを駆動させるために必要な大きなトルクが出せるだけなく、安定して動作し続ける高い耐久性のある減速機を探していました。
導入理由は何でしたか?
「高トルク×コンパクトの両立が採用の決め手でした」
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立て続けに起きた減速機の破損により開発が停滞する中、2023年9月に開催された国際物流総合展の当社ブースでRD2シリーズに興味を持っていただきました。当時、求めるスペックを満たせる製品が当社以外には見つからず、RD2シリーズの導入検討が迅速に進みました。そして、ナブテスコ製品が長きにわたりさまざまな分野で採用されてきたことを知り、“RD2シリーズであれば求めるスペックを満たせるうえに、耐久性や安全性も期待できる”と感じ、収穫機への導入が決定しました。大きなトルクが出せるだけでなく、「高トルク×コンパクト」を両立している点が採用の決め手でした。
また、林エンジニアリング様は当社営業の対応について、「小さい会社で台数も少ないからと後回しにされると思っていたが、収穫機に興味を持って素早く対応してくれて好印象だった。」と当時を振り返ります。
導入後の効果・感想は?
「カタログスペックに偽りなし。耐久性の高さに驚いています。」
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RD2シリーズの導入によりトルク不足が解消し、安定した走行ができるようになりました。“開発当初に導入した2社の減速機の5〜10倍稼働させているものの、破損や不具合が一切ない”と耐久性についても高く評価されています。RD2シリーズの導入をはじめとした収穫機の改良が進み、無事に試験機のベースが完成しました。現在では、2028年度の販売開始に向けて量産プロト機の製作が進められています。また、収穫機と併走して使用する、ブロッコリーの搬送台車の開発も進んでおり、そこにもRD2シリーズの導入を検討いただいています。
日本の農業の未来に大きく貢献する本プロジェクトにナブテスコ製品も関わることができ、大変嬉しく思います。今後もさまざまな分野でお客様の困りごとを解決できるよう、製品開発や技術革新に努めてまいります。
ナブテスコ 担当者の声
林エンジニアリング様と初めてお会いしたのは、2023年の国際物流総合展でした。その際、展示した減速機に興味を持っていただき、後日改めてご訪問して打合せを行いました。当時は、他社減速機を使用されており、試作段階で複数回破損したというお話を伺いました。弊社製品の「精密減速機RV™」の剛性や耐久性であれば、きっと満足して使っていただけると考え、ご要求スペックを丁寧にヒアリングし、型式を提案させていただきました。結果として、その型式が適合し、収穫機の走行能力向上に寄与できました。
弊社にとっても事例の少ない農業分野でのご採用となり、社会課題の解決に弊社製品が貢献できたことを嬉しく思います。また、製品の活躍の幅を広げていただいたことにも感謝しております。(営業担当)
林エンジニアリング株式会社 様
会社概要
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■事業内容
産業分野(機械設計業務、3Dモデリング業務、各種3次元解析業務、設計/組立調整/設置搬入/デバッグ、産業機器向け電磁ブレーキ開発)
農業分野(農業機械電動化事業)
■拠点
長野県駒ヶ根市飯坂1丁目32-2
■ウェブサイト
・ホームページ( https://h-eng.nagano.jp/)
用語集
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ギヤヘッドとは?
ギヤヘッドとは、モータと直接接続できるように、減速機本体とモータ取付構造(モータアダプタやカップリングなどの締結部品)が一体構造の減速機です。機種によっては取り付け用のフットやフランジが付いているものもあり、モータとの接続をスムーズにし、組み立ての手間を軽減します。
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RD2シリーズとは?
「RD2シリーズ」は、ナブテスコの高精度・高剛性な「精密減速機RV™」をベースに、モータとの接続性や装置への取り付けの容易さを向上させたギヤヘッド製品です。産業用ロボットや自動化装置など、精密な位置決めと高トルク伝達が求められる用途に適しています。
このシリーズは、減速機構造が中実型と中空型の2種類、入力方式がストレート、直交、プーリの6種類のバリエーションがあり、設計の自由度を大幅に向上させています。
詳細についてはこちらのページをご覧ください。 -
プーリーとは?
プーリー(pulley)は、ベルトやロープをかけて回転させるための車輪型の部品で、「滑車(かっしゃ)」とも呼ばれます。主に動力の伝達や物体の持ち上げに使用されます。
この回転する部品にロープやベルトを通すことで、力の向きを変える、少ない力で重いものを動かす、回転速度や力(トルク)を調整する、といった効果を得ることができます。
クローラー駆動において、モータの回転を減速機に伝える方法の一つに、プーリーを用いたベルト駆動があります。ここでのプーリーとは、モーター側と減速機側それぞれに取り付けられた円形の滑車で、ベルトを介して回転運動を伝達する部品です。
モータの出力軸に取り付けたプーリーが回転すると、ベルトを通じて減速機側のプーリーも連動して回転します。これにより、モーターの回転力(トルクや回転数)を直接接続せずに減速機へ回転力を伝達でき、配置の自由度や振動の吸収、メンテナンス性といった面でもメリットがあります。